岡山県をホームタウンとするファジアーノ岡山は、2025年、クラブとして初のJ1の舞台で戦うシーズンを迎えています。J2での長年の経験を礎に、緻密な戦術と選手の粘り強さで上位クラブに挑んでおり、岡山のサッカーファンに新たな熱気をもたらしています。本記事では、クラブの歩みから現在の戦術、注目選手、そしてホームスタジアムまで、ファジアーノ岡山の魅力を詳しく紹介します。
ファジアーノ岡山の歴史
Embed from Getty Images(ファジアーノ岡山 2017年)
ファジアーノ岡山の前身は、川崎製鉄水島製鉄所サッカー部のOBにより結成された、リバーフリーキッカーズにさかのぼります。その後、2003年に現体制の「ファジアーノ岡山FC」として再出発し、地域リーグからJリーグ入りを目指す道を歩み始めました。クラブ名の「ファジアーノ」はイタリア語で「キジ」を意味し、岡山県の県鳥に由来しています。
2008年にJFL(日本フットボールリーグ)へ昇格すると、翌2009年にはJ2参入を果たしました。以降、J2での戦いは長期にわたり、昇格争いの常連となった時期もあれば、下位に沈むシーズンも経験しました。特に2016年にはJ1昇格プレーオフ決勝に進出。惜しくも昇格を逃すも、クラブとしての地力を示しました。
そして、2024年シーズンには、ベガルタ仙台とのJ1昇格プレーオフを制し、クラブ史上初のJ1昇格を実現。地道な積み重ねがようやく実を結び、2025年はJ1の舞台で戦う初めてのシーズンとなっています。今季は守備時にコンパクトなブロックを形成し、攻撃から守備への切り替えを速く行う戦い方が特徴です。浦和レッズ戦や鹿島アントラーズといった強豪との戦いでも、惜敗ながらも粘り強い守備を見せるなど、昇格組ながら安定した試合運びを続けています。
2025年の戦術と注目選手
Embed from Getty Images(スベンド・ブローダーセン選手)
2025年のファジアーノ岡山は、3−4−2−1を基本布陣としています。守備ではウィングバックを下げて5バックを形成し、中央を締めるミドルブロックで相手の縦パスを制限。中盤の選手が素早く寄せることでセカンドボールを拾い、攻撃への切り替えを狙う形が多く見られます。開幕節の京都戦ではこの守備構造が機能し、2対0の完封勝利を収めました。
攻撃面では、サイドを起点とした展開が特徴的です。左サイドから右サイドへ大きく展開し、中央でフィニッシュに持ち込む形が複数回見られました。また、相手のプレス強度に応じて、ロングボール主体とビルドアップ重視を使い分ける柔軟性も見られ、J1昇格初年度ながら安定感のある戦いを続けています。2025年のファジアーノ岡山の注目選手は以下の3人です。

スベンド・ブローダーセン(GK)
GKスベンド・ブローダーセン選手は、ドイツ出身の守護神で、横浜FCでのプレーを経て2024年に岡山へ加入。身長188cmの長身と反射的なセービング能力が持ち味で、ビルドアップにも積極的に関与します。ゴール前での対応力が高く、守備組織との連携面でも安定感を備えています。ディフェンスラインを高く保つ岡山の戦術において、ブローダーセン選手は、最後の砦として大きな役割を担っています。シュートストップだけでなく、相手の裏へのボールにも果敢に飛び出し、攻撃の起点にもなる現代型のGKです。
佐藤 龍之介(MF)
佐藤龍之介選手は、2025年にFC東京より育成型期限付き移籍で加入した攻撃的MFです。高い技術と広い視野を生かし、テンポを変えるパスやスルーパスで攻撃を操ります。ボールを受ける位置取りのセンスがよく、相手のプレスを外す動きも得意としています。2025年は日本代表にも初招集され、今後の成長が期待される若手選手です。
ルカオ(FW)
FWルカオ選手は、ブラジル出身のストライカーで、Jリーグでは鹿児島ユナイテッドFCや松本山雅FCなどでプレーした経験を持ちます。パワフルなフィジカルと得点への嗅覚が特徴で、ゴール前での一瞬の動き出しに鋭さがあります。岡山加入後はチームの攻撃の中心として活躍し、191cmの長身を活かしたポストプレーや空中戦でも強みを発揮。2025年はJ1の舞台でも4得点(10月17日時点)を記録しており、攻撃陣の柱として信頼を集めています。
晴れの国を見渡す舞台 ― JFE晴れの国スタジアム

ファジアーノ岡山のホームである「JFE晴れの国スタジアム」(旧シティライトスタジアム)は、岡山市北区いずみ町に位置します。収容人数は約20.000人で、試合日には多くの観客が赤いユニフォームを身にまとい詰めかけます。アクセス方法は、岡山駅から徒歩約20分程度です。車での来場の場合は山陽自動車道岡山インターチェンジから約10分ほどで、公式HPでは近隣駐車場の事前予約が推奨されています。

ナイトゲームでは照明に照らされた芝生が美しく、家族連れや学生グループなど幅広い層の観客がスタンドを彩ります。スタジアムグルメも豊富で、地元食材を使った「デミカツ丼」や「岡山白桃ソフトクリーム」など、岡山らしい味覚が楽しめます。また、試合当日はファジアーノ岡山のマスコット「ファジ丸」が場内を回り、子どもたちに人気を集めています。スタジアム全体に温かい雰囲気があり、サポーターの応援チャントが一体感を生み出しています。


J1の舞台で積み上げる未来への歩み
Embed from Getty Images2025年のファジアーノ岡山は、初めてのJ1のシーズンを戦いながら、クラブとして確かな成長を見せています。J2で培った組織的な守備と切り替えの速さは上位クラブ相手にも通用しており、試合ごとにチームの成熟度が高まっています。
主力選手の安定したパフォーマンスに加え、若手の台頭もチームの推進力になっています。特に中盤の佐藤龍之介は、将来的に日本代表の中心選手として期待されており、クラブの象徴的存在となりつつあります。
J1定着に向けた課題は多いものの、岡山は確かな基盤を持っています。地元に支えられながら、一戦一戦を積み重ねる姿勢がチームの強みです。2026年シーズンへ向けては、より多くの勝点を積み上げ、上位進出を狙うシーズンとなるでしょう。ファジアーノ岡山は、いま新たな歴史を刻み続けています。
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