アメリカ、カナダ、メキシコで開催される2026FIFAワールドカップは、出場枠が48か国へと拡大される大きな転換点となりました。これまで以上に多くの国にチャンスが広がる大会です。
しかしその一方で、どれだけ枠が増えても出場できないチームが出てくるのも事実です。そしてそこには、世界トップクラスのスター選手たちも含まれます。
クラブでは主役として活躍しながら、なぜワールドカップには出場できないのか。この記事では、各国代表の近年の試合内容や予選の傾向を踏まえ、その背景を紹介していきます。
ジャンルイジ・ドンナルンマ|3大会連続W杯を逃したイタリア代表
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イタリア代表の守護神であるジャンルイジ・ドンナルンマ(マンチェスター・シティ)は、世界屈指のゴールキーパーとして知られています。UEFA EURO 2020では優勝に貢献し、大会MVPにも選ばれました。
しかし、イタリア代表はワールドカップ予選で安定した結果を残せていません。2022 FIFAワールドカップ予選ではプレーオフで北マケドニアに敗れ、本大会出場を逃しています。さらに、2026年も欧州予選プレーオフ決勝でボスニア・ヘルツェゴビナに敗れ3大会連続でワールドカップ出場を逃す結果となりました。
欧州予選はグループ1位のみがストレートインとなることが多く、2位以下はプレーオフに回る厳しい仕組みです。そのため、1試合の引き分けや取りこぼしが、そのまま出場可否に直結します。南米予選のように長期戦で順位が収束していく形式とは異なり、短期的な不安定さが致命傷になりやすいのが特徴です。
実際、イタリアはここ数年、格下相手に勝ち切れない試合や決定機を逃す展開が目立っています。守備は安定している一方で、試合を決めきる攻撃面に課題を抱えており、「負けないが勝ち切れない」試合が増えている点は否めません。
このように、個々の能力では世界トップクラスでありながら、チームとしての再現性や勝負強さが不足すると、ワールドカップ出場は一気に遠のいてしまいます。近年のイタリア代表は、その難しさを象徴する存在となっています。
ロベルト・レヴァンドフスキ|ポーランド代表が苦戦する背景
Embed from Getty Images(FCバルセロナでプレーするレヴァンドフスキ選手)
ポーランド代表のロベルト・レヴァンドフスキ(FCバルセロナ)は、長年にわたり世界トップレベルで得点を重ねてきたストライカーです。クラブでは依然として高い決定力を維持しており、ゴール前での存在感は際立っています。
しかし、ポーランド代表は予選において安定して勝点を積み上げることができていません。その最大の要因は、攻撃がレヴァンドフスキに依存しやすい点にあります。相手が徹底的に対策を施した場合、ポーランドにはチームとして別の攻撃パターンを作れない場面も見られます。
また、欧州の中堅国に共通する問題として、選手層の厚みが挙げられます。強豪国であれば控え選手でも試合の流れを変える力を持ちますが、ポーランドの場合は主力のコンディションや出来に左右されやすい状況にあります。
その結果、接戦を勝ち切れず、引き分けや敗戦で勝点を落とす試合が増えています。エースの存在だけでは安定して勝ち続けることは難しく、チーム全体の完成度が結果に直結していると言えるでしょう。
ヴィクター・オシムヘン|ナイジェリア代表が勝ちきれない理由
Embed from Getty Images(ヴィクター・オシムヘン選手)
ガラタサライ(トルコ1部)でプレーするヴィクター・オシムヘンは、スピードとフィジカル、そして高い決定力を兼ね備えたストライカーです。アデモラ・ルックマン(アトレティコ・マドリード)やビクター・ボニフェイス(ブレーメン)らとともに、ナイジェリア代表の攻撃陣はアフリカでも屈指のタレントを揃えています。
しかし、ナイジェリア代表は2026年ワールドカップ・アフリカ予選において、格下とされる国々に対しても引き分けを喫するなど、勝点の取りこぼしが目立っています。
近年のアフリカでは各国の戦術レベルが向上し、組織的な守備とカウンターを徹底するチームが増えています。そのため、個の能力だけで試合を決定づけることは難しくなっています。
ナイジェリアの課題は、攻撃陣のタレントに対して守備の組織性と試合運びの安定性が追いついていない点にあります。対人の強さはあるものの、ラインコントロールや切り替え時のリスク管理に課題があり、主導権を握りながら失点する場面も見られます。
その結果、試合を優位に進めながらも勝ち切れない状況が続いています。ワールドカップ出場のためには、攻撃の強みを活かすビルドアップの整備と、守備ブロックの組織化が不可欠と言えるでしょう。
ドゥシャン・ヴラホヴィッチ|セルビア代表の課題とは
Embed from Getty Images(ユベントスでプレーするヴラホヴィッチ選手)
ユベントスに所属するドゥシャン・ヴラホヴィッチは、190cmの体格を活かしたポストプレーと高精度の左足シュートを武器とするストライカーです。アレクサンダル・ミトロヴィッチやドゥシャン・タディッチらとともに、セルビア代表は欧州でも上位の得点力を秘めています。
しかし、セルビア代表は安定した戦いを続けることに苦戦しています。攻撃面では高い個の能力を持つ選手が揃っている一方で、守備面では組織としての完成度にばらつきが見られます。
セルビア代表の最大の課題は、攻撃陣のタレントに対して守備組織の整備が追いついていない点にあります。3バック採用時にはウィングバック背後のスペース管理や、カウンター時のリスク対応に不安が残ります。その影響で試合運びに余裕を持てず、前線が孤立する展開も見られます。
また、個の能力をチームとして機能させる戦術的な整理も十分とは言えません。ビルドアップの安定性や中盤の守備バランスが整わない中で、試合ごとのパフォーマンスにばらつきが生じています。
その結果、強豪相手に善戦する一方で取りこぼしも多く、「安定して勝ち切れない」状況が続いています。ワールドカップ出場に向けては、守備の再構築が不可欠です。
個の力だけでは届かないワールドカップ
2026FIFAワールドカップは、出場枠が48か国に増えたことで、多くのスター選手が見られると期待する声もあります。しかし実際には、予選の競争は依然として厳しいままです。
欧州予選のように限られた枠を争う地域では、1試合の取りこぼしが致命的になります。一方でアフリカ予選のように実力差が縮まっている地域では、「勝ちきれないこと」そのものが大きなリスクとなります。
近年の代表サッカーでは、個の能力だけで勝ち抜くことは難しくなっています。むしろ、戦術の浸透度や試合ごとの安定性といったチームとしての再現性が結果を左右する傾向が強まっています。
ワールドカップ出場という結果には、こうした総合力が色濃く反映されます。その厳しさこそが、この大会の価値であり、世界中の注目を集める理由の一つと言えるでしょう。
