静岡県中部の藤枝市を拠点とする藤枝MYFCは、2022年にJ2へ昇格した比較的新しいクラブです。しかし、その背景には“サッカーの街・藤枝”の伝統があります。かつて藤枝には藤枝ブルックスというクラブが存在し、藤枝MYFCはそのサッカー文化を引き継ぐ形で誕生しました。本記事では藤枝MYFCの歩み、2025年シーズンの戦術と注目選手、ホームスタジアムの魅力を紹介します。
藤枝MYFCの歩み
Embed from Getty Images(藤枝MYFC 2015年)
藤枝MYFCのルーツは、1982年に誕生した「中央防犯サッカー部」に遡ります。クラブは1994年に「中央防犯FC藤枝ブルックス」と改称し、地元の支援を受けながらJリーグ参入を目指しました。ところがスタジアム整備などの条件を満たせず、最終的に福岡へと移転。クラブは「福岡ブルックス」を経て、現在のアビスパ福岡の母体となりました。
この移転は藤枝にとって苦い出来事でしたが、同時に「藤枝のサッカーが九州に渡り、Jクラブ誕生の礎となった」事実は、街の誇りでもあります。その後「藤枝ネルソンCF」が設立され、2010年に静岡FCと合併。クラブ名の「MYFC」は“My Football Club”の略で、サポーターがクラブ運営に関わる理念を示しています。誕生当初はインターネットを通じてファンが経営や強化に意見を反映できる仕組みを導入し、日本でも先駆的な存在でした。その後は地域リーグで活動を続けながら、Jリーグ参入を目指して歩みを進めました。
2014年にJ3リーグへ参加し、着実に順位を伸ばすと、2022年シーズンにJ2昇格を決定。藤枝は清水エスパルス、ジュビロ磐田と並び、静岡を代表する3クラブの一角に加わりました。これにより、当時は果たせなかった「地元にJクラブを残す」という願いは、藤枝MYFCによって実現されました。
2025年の戦術と注目選手
Embed from Getty Images(北村海チディ選手)
藤枝MYFCは2025年シーズン、試合によって3バックや4バックを使い分けるなど、柔軟な布陣を採用しています。チームは「超攻撃的」を掲げ、ボール保持を重視するスタイルです。一方で、J2の舞台では守備の強度も不可欠です。自陣にブロックを敷いて守備を固め、そこから素早く攻撃へと切り替える場面も見られます。攻撃と守備のバランスを取りつつ、攻める姿勢を崩さない点が2025年シーズンの戦い方の特徴と言えます。そんな藤枝MYFCの注目選手は以下の3人です。
北村海チディ(GK)
2000年生まれの守護神。2025シーズンは開幕から全試合に先発(2025年8月末時点)し、J2全体でもトップクラスのセーブ数を記録しています。被ゴール期待値を実際の失点で大きく下回るなど、数字の面でも高い貢献度を示しており、チームに安定感をもたらす最後の砦です。冷静な判断力と高いセービング技術で、藤枝の攻撃的スタイルを後方から支えています。
浅倉廉(MF)
チーム内得点王で、2025シーズンは27試合で8得点3アシストを記録(2025年8月末時点)。ラストパスやシュート数でも上位に位置し、得点力とチャンスメイクを兼ね備える攻撃のキーマンです。ターンから仕掛けるプレーや狭いスペースでの突破が持ち味で、攻撃の爆発力をもたらしています。
矢村健(FW)
2025年8月にアルビレックス新潟から藤枝MYFCへ完全移籍。2024年には期限付き移籍で藤枝に在籍し、38試合で16得点を挙げてチームの得点王となり、J2の最優秀ゴール賞も受賞しました。ゴールへの嗅覚と裏への抜け出しが持ち味のストライカーで、再び藤枝の攻撃を牽引する存在として期待されています。
藤枝総合運動公園サッカー場:“サッカーの街”を象徴する舞台

藤枝MYFCのホームスタジアムは「藤枝総合運動公園サッカー場」です。収容人数は約13,000人。陸上トラックを持たない専用球技場で、ピッチと観客席の距離が近く、臨場感あふれる試合を楽しめます。サッカーの街・藤枝らしく、少年少女の観戦姿も多く見られ、地域全体でクラブを支える雰囲気が特徴です。
また、アクセスのしやすさも魅力の一つです。藤枝駅からシャトルバスが運行され、所要時間は20分程度。車の場合はスタジアム周辺の予約制有料駐車場があります。スタジアムグルメも地元色が強く、静岡おでんなど、観戦と合わせて楽しめる要素が多いこともファンに親しまれている理由です。

サッカーの街・藤枝から羽ばたく藤枝MYFC
Embed from Getty Images藤枝MYFCは、サッカー文化の根付いた街・藤枝の歴史と誇りを背負いながら、近年の急速な成長を遂げています。2022年にJ2へ昇格したことで、静岡県中部におけるプロサッカークラブとして地域の顔となり、サポーターの期待を一身に集めています。
2025年シーズンは「攻撃的なゲームスタイル」と「守備の強度」の両立を試みており、それらが実現すればJ2でも上位争いができるでしょう。ホームスタジアムは観客との距離が近く、一体感ある応援文化が根付いている点も魅力です。選手層の厚みや運営体制の充実が課題ですが、「街と共に戦うクラブ」という理念を軸に、成長を続けることが期待されています。
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