1947年創設の実業団チームから出発し、栃木県1部リーグや関東リーグを経て2024年にJFL(ジャパンフットボールリーグ)優勝・J3昇格を果たした栃木シティFC。地元・栃木市を拠点に、地域密着のクラブ運営と着実なチーム強化を進めてきました。2025年はクラブ史上初のJリーグ挑戦となり、その戦いぶりに全国のサッカーファンから注目が集まっています。ここでは、栃木シティFCの歴史や、2025年の注目選手。ホームスタジアムの魅了などをお伝えします。
栃木シティFCの歴史
Embed from Getty Images栃木シティFCの前身は、1947年に創設された「日立栃木サッカー部」です。長年にわたり実業団チームとして活動を続け、栃木県リーグや関東社会人リーグなどで地域サッカーを支えてきました。2006年には「ウーヴァスポーツクラブ」と統合し、「日立栃木ウーヴァスポーツクラブ」として新たなスタートを切ります。翌2007年からは関東サッカーリーグ1部に所属し、地域の有力クラブとして成長を続けました。
2009年の全国地域サッカーリーグ決勝大会では準優勝を果たし、2010年からJFLへの初参戦が決定します。その後、クラブ名を「栃木ウーヴァFC」に変更し、地域密着を掲げて活動を続けましたが、2017年には成績不振によりJFLから関東リーグへ降格。この挫折をきっかけに、クラブは再建と組織改革に踏み切ります。
2018年に法人化を実現し、2019年から現在の「栃木シティFC」へ名称を変更しました。体制刷新と同時に、ホームタウン整備や育成年代の充実を進め、クラブの基盤を強化していきます。2023年には関東サッカーリーグ1部で優勝し、悲願のJFL復帰を果たしました。
迎えた2024年シーズン、栃木シティはJFL初年度ながら開幕から安定した戦いを見せ、シーズンを通して高い得点力と組織的な守備を発揮。第29節のアトレチコ鈴鹿戦では6対0で快勝し、見事JFL初優勝を飾りました。この結果により、2025年からJリーグへの参入が正式に決定しました。実業団時代からおよそ80年、地方クラブとして積み重ねた努力が、ついに全国リーグの舞台で実を結んだ形です。
2025年の戦術と注目選手
Embed from Getty Images(田中パウロ淳一 選手)
2025年シーズンの栃木シティは、今矢直城監督のもと、昨季に続いてアグレッシブなサッカーを展開しています。今矢監督は就任当初から「ボールを持つことで主導権を握り、ボールを失えば素早く奪い返す」という明確なスタイルを打ち出しており、攻守における切り替えの速さと組織的なハイプレスをチームの核としています。
一方で、J3の舞台では単に攻撃的なだけでなく、守備のバランスと試合運びの精度も求められます。ポゼッションを目的化せず、相手の守備ブロックを見極めて前進する判断力や、試合展開に応じた柔軟なビルドアップが特徴です。システムは4-1-2-3を基本に、サイドの厚みと中盤の流動性を両立させた構成となっています。これにより、J3リーグでも上位争いを演じることのできるチームに仕上がっています。2025年の栃木シティFCの注目選手は以下の3人です。

相澤ピーターコアミ(GK)
GK相澤ピーターコアミ選手は、ジェフ千葉やヴァンラーレ八戸などを経て2024年に栃木シティに加入しました。193cmの長身を活かしたハイボール対応に加え、ビルドアップに参加できる足元の技術も評価されています。シュートへの反応速度が速く、1対1の局面で強さを発揮するタイプです。
マテイ・ヨニッチ(DF)
DFマテイ・ヨニッチ選手は、クロアチア出身のベテランセンターバック。セレッソ大阪などで活躍し、2025年に栃木シティへ加入しました。187cmの体格を活かした空中戦の強さとライン統率力に優れ、経験豊富な守備リーダーとしてチームを引き締めています。さらに、的確なカバーリングとビルドアップ能力を併せ持ち、試合の流れを読む判断力も光ります。
田中パウロ淳一(FW)
FW田中パウロ淳一選手は、2023年から栃木シティに加入し、攻撃の軸としてチームをけん引する選手です。細かいタッチとスピードを生かしたドリブル突破、前線での動き出し、そして状況判断の速さが特徴です。また、得点面だけでなくアシストにも絡むことができる点から、攻守両方で貢献できる万能型のストライカーとして評価されています。実際に試合終盤の決定的な場面を演出することも多く、J3の舞台でもその攻撃力には注目が集まります。
加えて、田中選手はサッカー選手としてだけでなく、youtubeやTikTokなどのSNS発信も積極的に行っています。「栃木シティをより多くの人に知ってもらいたい」「クラブの露出を増やしたい」との思いから、自ら動画投稿や発信を継続しており、ピッチ外での活躍も注目されています。
CITY FOOTBALL STATION ― 栃木市の新しいサッカー拠点
Embed from Getty Images栃木シティの本拠地である「CITY FOOTBALL STATION(シティフットボールステーション)」は、栃木市岩舟町に位置する近代的な専用スタジアムです。収容人数は約5,000人とコンパクトで、クラブハウスやトレーニングピッチを併設しています。
特徴的なのは、ピッチと観客席の間にフェンスが設けられておらずネットのみで仕切られている点です。このため、観客席とピッチの距離は5mと非常に近く、選手の動きや声が間近で感じられる臨場感が魅力です。試合当日はサポーターの声援が反響しやすく、迫力ある雰囲気を作り出します。
照明設備も完備されており、ナイトゲームにも対応。飲食スペースやグッズ販売エリアも整備され、地域イベントの会場としても活用されています。また、地方クラブとしては珍しく、スタジアム・トレーニング施設を一体化させたモデルケースとして注目されています。
アクセス面では、JR両毛線「岩舟駅」から徒歩約30分、タクシーでは5分ほど。東北自動車道「佐野藤岡IC」から10分~15分程度で、県外からの来場も容易です。スタジアムには無料駐車場がありますが、台数が限られているため、車での来場の際は、近隣の有料駐車場を事前に予約すると便利です。

昇格1年目での躍進、J3優勝とJ2昇格の行方
Embed from Getty Images2024年にJFLを制し、J3昇格を果たした栃木シティFCにとって、2025年は次なるステップを目指すシーズンです。10月17日現在クラブはJ3優勝、J2昇格に手が届く2位に位置しており、終盤戦に向けて負けられない戦いが続きます。今後の対戦相手は、同じくJ2昇格を目指す上位チームとの戦いもあり、ここからが栃木シティFCにとっての正念場です
Jリーグという新しい舞台では、経験豊富な選手と若手の融合、試合運営やスタジアム整備など、クラブ全体の成熟が求められます。ホームのサポーターの後押しを力に、昇格1年目でのJ3優勝という偉業に向けて、チームの戦いはますます注目を集めています。
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