炎天下の中で子どもがサッカーをする――そんな光景を見て、「本当に大丈夫なのだろうか?」と心配になったことのある保護者は少なくないでしょう。特に近年は熱中症による事故の報道も相次いでおり、「夏のスポーツ活動」は大きな関心事です。体力が未熟な小中学生にとって、猛暑はまさに命にかかわる問題。とはいえ、チーム活動や大会、サッカーが大好きな子どもの気持ちを尊重したいという思いもあるでしょう。
そこで今回は、JFA(日本サッカー協会)が定めた「暑さ対策ガイドライン」の内容を中心に、真夏のサッカーにどう向き合えばよいのかを、保護者の視点で解説します
JFAガイドラインが示す「真夏の大会原則中止」方針とは?

2023年、JFA(日本サッカー協会)は「熱中症リスクへの対応」を強化する目的で、「暑さ対策ガイドライン」を大幅に見直しました。特に大きなポイントは、2025年度以降、JFAが主催・管轄する大会やリーグ戦、フェスティバル等を原則として7月・8月には開催しないと定めたことです。
この背景には、WBGT(暑さ指数)や熱中症リスクの科学的知見があり、特に夏場の昼間にスポーツを行うことは、子どもの命に直結するリスクがあると判断されました。指導者や主催者だけでなく、保護者も「夏に無理をさせないこと」が強く求められるようになったのです。
家庭でもできる!子どもの熱中症対策5つのポイント

公式な大会が減ったとしても、地域のクラブ活動や自主練習、スクールなどで夏場にプレーする機会は完全にはなくなりません。そこで、家庭でできる実践的な暑さ対策を5つ紹介します。
活動前後の水分補給を徹底する
プレーの30分前から水分を摂り始め、15〜20分おきにこまめな給水を。塩分も一緒に摂れるスポーツドリンクが理想です。
プレー時間を「朝夕」に限定する
直射日光の強い時間帯(10時〜16時)は避けましょう。早朝や日没後のトレーニングが推奨されています。あるクラブでは、7〜8月の平日練習を完全に休止。週末の活動も朝6時〜8時の2時間のみとし、それ以外の時間は自主練習や動画学習へ切り替えています。
体調チェックを習慣化する
「いつもより元気がない」「食欲がない」「頭が痛い」といった軽微な体調変化も見逃さず、親子で「今日は無理しない判断」ができるようにしましょう。思い切って休むのもトレーニングの一つです。

保冷グッズを持たせる
保冷ボトル、氷嚢、ネッククーラー、冷却スプレーなど、現場で身体を冷やせるアイテムを常備しておくと安心です。注意点はサッカー用のバックには水筒やタオル、スパイクなどを入れるので意外と重くなります。保冷ボトルなどはできるだけ軽いものを選ぶと良いでしょう。
チームと保護者の連携も重要に

保護者個人の判断だけでなく、チーム全体として「無理をしない」「暑さへの理解を深める」ことが重要です。JFAも各クラブに対し、WBGT計を用いた計測、活動中止ラインの明確化、緊急時の対応マニュアル整備などを求めています。保護者は、練習予定が高温時間帯に設定されていないか、休憩が十分か、などを定期的にチェックし、必要に応じて指導者と連携する姿勢も求められます。
それでもやりたい子どもたちの気持ちをどう守るか

中には「サッカーが大好きだから練習に行きたい」「休むのが嫌」と感じる子どもも多くいます。そうした気持ちを否定せず、どう付き合っていくかも大切な視点です。
「今日は気温が高いから、代わりに部屋でリフティングを練習しよう」
「映像でプロの試合を見て、ポジショニングを勉強しよう」
このように、“サッカーとの接点”は工夫次第で保てます。指導者と連携し、無理なく安全に成長できる道を模索していきましょう。
「無理させない」が今の常識、夏でも子どものサッカーを守るために

かつては「夏こそ気合い」「根性で乗り切れ」といった精神論もありましたが、今は「子どもの命を守る」ことが最優先の時代です。JFAのガイドラインや科学的な知見を活かし、保護者が主体的に対策を講じることが、これからのサッカー育成の土台になります。
子どもがサッカーを楽しみながら、安全に成長していくために暑さとどう付き合うかを、家族ぐるみで考えるタイミングかもしれません。
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